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あるクラブが売りに出されたというニュースを目にすると、私はいつも移籍市場の噂話より先に、そのクラブのスタジアム資料を開く癖があります。
今回目に留まったのはレスター・シティでした。
2026年8月11日前後に英国メディアが一斉に報じたところによると、レスターを所有するタイのシーワッタナプラーパー一族が、米投資銀行シティグループを通じて投資家候補に売却案内書を配り始めたといいます。
希望売却額は2億ポンド(約3,825億ウォン)以上とされ、対象にはホームスタジアムのキングパワー・スタジアム、シグレイブ練習場、男女トップチーム、ユースアカデミー、さらには同じ一族が所有するベルギーのプロサッカークラブOHルーヴェンまで含まれると伝えられています。
プレミアリーグ史上最も有名な番狂わせの主役が売りに出されたこと自体も興味深かったのですが、現役マーケターとして目を引かれたのはもう一点別のところにありました。
キングパワー・スタジアムは、オーナー一族の会社がクラブとスタジアムのネーミングライツを同時に握っているという、珍しい構造を持っている点です。
この構造が今回の売却局面とどう絡み合っているのか、そして3部相当のリーグワンまで落ちたクラブの観客動員・グッズ・放映権のデータが実際どうなっているのか、一つずつ確認してみました。

出典: Geograph Britain and Ireland(Mat Fascione)、CC BY-SA 2.0
キングパワー・スタジアムの正面には、2018年のヘリコプター墜落事故で亡くなったヴィチャイ・シーワッタナプラーパー元会長のブロンズ像が立っています。
親指を立てたポーズで知られるこの像は彼の誕生日に合わせて正式に除幕され、すぐ隣には事故の犠牲者を追悼するメモリアルガーデンが設けられています。
像は24時間いつでも見学でき、メモリアルガーデンは日中に参拝客を受け入れています。
クラブが3部相当まで落ち、売却対象にまでなった今もこの場所だけは変わらず維持されている点に、ブランド資産というものが成績表一枚で簡単には消えないことを改めて感じさせられました。
観客動員とチケット — リーグワンでの集客力
レスターは2026年4月22日のハル・シティ戦の引き分けで、EFLリーグワン(3部相当)への降格を確定させました。
直近4年でプレミアリーグとチャンピオンシップを行き来した末、ついにイングランド3部相当まで落ちたことになります。
2025-26シーズンの平均観客数は28,907人で、2013-14シーズン以降で最も低い数字となりました。
それでもクラブは2026-27シーズンの一般成人シーズンチケット価格を404ポンド(約77万ウォン)に据え置き、直近12シーズンで10回目の据え置きになるといいます。
新規購入者向けの最も安い成人シーズンチケットも457ポンド(約87万ウォン)で、リーグワン23試合換算だと1試合あたり2千円に満たない計算です。
3万2千席規模のスタジアムを3部相当のリーグでも極力満席にしようという姿勢が、価格設定にそのまま表れていました。

出典: Arne Müseler(arne-mueseler.com)、Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)・リバー・ソア沿いに位置するキングパワー・スタジアムの空撮

出典: Geograph Britain and Ireland(Ian S)、CC BY-SA 2.0・透かしなし、再利用条件確認済み
ネーミングライツと広告インベントリ — オーナー自らがスポンサー
キングパワー・スタジアムという名前が付いたのは2011年7月のことです。
もともとはスナック菓子メーカーとのスポンサー契約で「ウォーカーズ・スタジアム」と呼ばれていましたが、クラブを買収したタイの免税店企業キングパワーがネーミングライツ(施設に企業名を冠する権利)を引き継いで現在の名前になり、2013年にはスタジアムの所有権そのものも買い取りました。
国内のKBO球場に例えるなら親会社が自社の球場に自社の名前を付けた構造に近いのですが、違うのはキングパワーがタイ最大の免税店チェーンであるため、このブランディングがイングランド国外でも実質的な営業効果を生んでいるという点です。
レスターの公式グッズはlcfc.comのオンラインストアだけでなく、タイ全土のキングパワー免税店でも常時販売されており、これほどの自社流通網を持つEPLクラブは多くありません。
ユニフォームスポンサーの方は、もう少し一般的な市場原理に沿っています。
暗号資産ベッティングプラットフォームのBC.Gameが2024年から2シーズン契約(4千万ドル、約552億ウォン規模)でチェストスポンサーを務めており、2026-27シーズンも3年目に延長することが決まりました。
ただ、プレミアリーグは奇しくも2026-27シーズンからユニフォーム前面のギャンブルスポンサーシップを全面禁止したものの、レスターはすでにその下のリーグへ降格していたため、この規制の対象からは外れています。
キットサプライヤーはアディダスで、ファンはBC.Gameのロゴがあるバージョンとないバージョンを選んで購入できます。
グッズ(MD)とファン体験
スタジアム内にはフォクシズ・ファンストア(Foxes Fanstore)という名前の公式旗艦店があります。
ユニフォームからカジュアルウェアまで全ラインナップを揃えており、ブラックフライデーやシーズン終了時にはコンコースで別途セールも行われます。
チケットやグッズの売上そのものをクラブが公開することはありませんが、アウェイサポーターのレビューサイトを見る限り、このスタジアムのマッチデー体験への評価は総じて好意的でした。
完全密閉型のスタンドで座席の高さや形状が統一されており音響がよくまとまるという評価や、「訪れたアウェイ会場の中でも屈指の雰囲気だった」というレビューがある一方で、スタジアム周辺にはパブとスーパーが1、2軒ある程度で楽しめる場所が少ないという不満も同時に見られました。
現地のマッチデーホスピタリティのレビュー投稿者はラウンジ施設とアクセスの良さを特に高く評価していましたが、現役マーケターの視点で見ると、スタジアム内の商品・サービス競争力は十分でも、周辺商圏と結びついたマッチデー経済は相対的に弱いという印象で、この点は後述する再開発計画とも直結していました。
実際にクラブは2023年12月、イーストスタンドに上層階を増設して収容人数を4万人まで引き上げる案を含め、220室規模のホテル、多目的イベントアリーナ、新規小売スペース、オフィスまで盛り込んだ再開発計画について地域議会の承認を得ました。
工事期間中に千人、完成後は常時千人の雇用が生まれるとクラブは試算していましたが、財政難と今回の売却手続きが重なり、着工時期は先延ばしが続いている状況です。

出典: レスター・シティ公式サイト(lcfc.com)より・キングパワー・スタジアム内フォクシズ・ファンストアの商品陳列棚、クラブ公式プロモーション画像

出典: レスター・シティ公式サイト(lcfc.com)より・クラブ公式プロモーション画像、編集・参考目的で使用
放映権と地域経済効果
レスターの財政難を最も劇的に示す数字が、放映権料の格差です。
プレミアリーグは2025~2029シーズンの放映権をスカイスポーツやTNTスポーツなどに総額67億ポンド(約12兆8,000億ウォン)で売却しましたが、チャンピオンシップ・リーグワン・リーグツーをまとめたEFL全体の放映権は2024-25シーズンから2028-29シーズンまでの5年間、スカイスポーツと9億3,500万ポンド(約1兆7,900億ウォン、保証額8億9,500万ポンドにマーケティング支援4千万ポンド)で契約されました。
リーグワンの試合はシーズン248試合が放送され、週末ごとに5試合が生中継されますが、その放映権料をチャンピオンシップ・リーグワン・リーグツーの72クラブで分け合う構造です。
レスターは今年1月、銀行融資を通じて残っていたパラシュート・ペイメント(降格クラブの収益急減を数シーズンかけて緩和するプレミアリーグの時限支援金)を前倒しで現金化したため、今季の放映権収益として実際に手元に残る現金は200万ポンド(約38億ウォン)程度にとどまる見通しで、EFL加盟クラブで分配される連帯基金の配分率も基本12.6%程度まで下がるとみられています。
かつて3千万~5千万ポンド(約570億~960億ウォン)規模だった放映権収益が急減した格好で、この落差が売却を急がせた大きな要因の一つに挙げられています。
キングパワー・スタジアムは130年近くこの地域のサッカーの拠点であり続け、再開発計画にも「レスターシャーが世界的なスポーツ都市であるという独自性を強化する」という目標が明記されていました。
ただ今回の売却で所有構造自体が変わる可能性がある以上、地域経済効果につながるこの青写真がそのまま維持されるかは、新たなオーナーシップが定まるまで見守る必要がある状況です。
KBO・Kリーグと比べてみると
韓国のプロスポーツと比べて最も際立つ違いは、「降格」という変数そのものです。
KBOには昇降格制度がなく、成績がどれだけ悪くてもリーグ所属や放映権・スポンサー収益の構造が突然崩れることはありません。
Kリーグにも1部と2部の間に昇降格制度はありますが、そもそも放映権・スポンサー収益における放送への依存度がEPLほど絶対的ではないため、降格に伴う財政的打撃の絶対規模自体が違います。
EPLがパラシュート・ペイメントという別建ての安全装置まで用意している理由も、1部と2部の間の放映権収益格差がそれだけ大きいからです。
レスターの事例は、その安全装置さえ尽きた場合、3部相当まで落ちたクラブがいかに早く崖っぷちに追い込まれ得るかを示す極端な例だといえます。
逆にネーミングライツの構造は、むしろ国内の事例に近いものでした。
オーナー企業がクラブとスタジアムを共に所有し、自社ブランドをそのまま露出させている点で、キングパワー・スタジアムは第三者が市場価格を払って命名権だけを買うアメリカ式というより、サムスン・ライオンズパークやハンファ生命ボールパークに近い構造です。
ただしキングパワーは免税店という消費財業種の特性上、そのブランディングが実際の海外観光客向け売上につながる余地がある点で、国内事例より一歩踏み込んだ活用方法だという印象を受けました。
おとぎ話のようだった2015-16シーズンの優勝ストーリーは、今も色あせない資産です。
シーズン開幕前オッズ5000分の1という、単一イベントとしては史上最長クラスのオッズを覆して頂点に立ったその物語は、今も世界中のサッカーファンの間で語り継がれています。
ただ、その資産を今後どう活用するかは、もはやシーワッタナプラーパー一族ではなく新たなオーナーの手に委ねられる可能性が大きくなりました。
売却手続きがどう決着するのか、そして新オーナーの下でもキングパワーという名前が維持され続けるのか、今後注目される点です。

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