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先月5月、アーセナルが22年ぶりにプレミアリーグ優勝を確定させたという知らせを受けて、このクラブのマーケティング構造をちゃんと見てみようと思っていたのですが、忙しさを理由にようやく書くことになりました。
アーセナルは2022-23シーズンから3シーズン連続でリーグ準優勝にとどまっていましたが、2025-26シーズンは5月19日にマンチェスター・シティがボーンマスと引き分けたことで優勝が確定し、その後5月24日のクリスタル・パレス遠征で2-1と勝利し、シーズン最終戦でトロフィーを掲げました。
国内のKBO球団の中でも何十年も優勝がないクラブのファンを見ると、その方々の悔しさや嘆きを言葉にするのが難しいことがあります。アーセナルも22年という時間は一世代分のファンがまるごと優勝を見られなかったということであり、それだけに今季のクラブの売上・観客・グッズ販売の指標がどのように揺れ動いたかがマーケターとして興味深かったです。

出典: arsenal.com エミレーツ・スタジアム紹介ページのキャプチャ
ファンと観客
エミレーツ・スタジアムの収容人数は60,704席で、2025-26シーズンの平均観客占有率(収容人数に対する実際の入場者比率)は99.1%に達しました。
シーズンを通して事実上の完売が続いたということで、この程度の占有率を維持しながらもチケット価格はランク別に分かれており、大人の下位ランク(カテゴリーC)で最低価格は31.80ポンドから、比較的人気のある試合(カテゴリーB)は44.80ポンドからとなっています。
シーズンチケットの購入はシルバー・レッドの二段階のメンバーシップ等級に応じて抽選(バロット)方式で割り当てられる構造で、このように需要を等級化して管理する方式自体が、慢性的な完売状況下でファンダムを等級別に細分化してロイヤルティを管理する典型的なチケットマーケティング戦略として注目に値します。
広告インベントリとネーミングライツ
広告インベントリ面で最も目を引くのはやはりエミレーツとの契約構造です。
今年、両者はユニフォームスポンサーシップとエミレーツ・スタジアムのネーミングライツ(スタジアムに企業名を付ける権利)をまとめた長期契約を2032年まで延長しました。2026-27・2027-28シーズンは年間6,500万ポンド、2028-29シーズンから2031-32シーズンまでは年間7,500万ポンドで、総契約規模は約4億3,000万ポンド(為替をおおむね1ポンド=1,750ウォンで見積もると約7,500億ウォン前後)に達します。
ただしこの金額はユニフォーム前面露出権とスタジアム名を束ねたパッケージ全体の価格であり、純粋にエミレーツ・スタジアムという名前料だけを分けて見れば、過去の契約では年間280万〜400万ポンド程度と評価されたこともありました。
つまりこの点は経験上、国内のプロクラブとの差が大きいのですが、おそらくEPLクラブは世界中の関心を集めるリーグであるため、スタジアムのネーミングライツ自体よりもユニフォーム前面露出が圧倒的に高価な資産になり得たのだと思います。この構造を知ると、なぜ他のクラブもネーミングライツ単独よりユニフォーム・スリーブスポンサーを組み合わせてパッケージで売るのかが理解できます。
実際、アーセナルは2026-27シーズンからそれまでスリーブ(袖)スポンサーだった“Visit Rwanda”に代わり、グローバルな人事・給与管理プラットフォームのDeelと新たに契約を結びました。年間1,800万ポンドで、成果ボーナスが付けば最大2,500万ポンドまで上がる構造です。
ここにアディダスが用具供給パートナーとして年間約7,500万ポンドを支払っており、ユニフォームひとつに最低でも三か所のスポンサー・ロゴがそれぞれ異なる単価で載っていることになります。
放映権
放映権収入はまだ今シーズンの財務諸表が正式発表されていないため推定値ですが、あるサッカー財務分析メディアは2025-26シーズンのアーセナルの放送関連収入を約3億2,600万ポンドと推定しました。
このうちプレミアリーグ国内の中継配分金が約1億9,900万ポンド(前年同期比16%増)、チャンピオンズリーグ決勝進出に伴うUEFAの中継収入が約1億2,100万ポンドに分かれます。
参考までに、アーセナルは今季チャンピオンズリーグ決勝でパリ・サンジェルマンと1-1で終えた後、PK戦(4-3)で敗れて準優勝に終わりましたが、決勝まで進出しただけでも放映収入の配分ランクが大きく上がる構造なので、リーグ優勝とは別に欧州大会での成績自体が大きな収入源であることを改めて確認できました。

出典: arsenal.com ページのキャプチャ
収益と財務パフォーマンス
公式に確定している最も新しい財務資料である2024-25シーズン決算によると、アーセナルの総売上高は6億9,100万ポンド(為替を考慮するとおおむね1兆2,000億ウォン前後)でクラブ史上最高を記録し、そのうち商業部門の売上(スポンサーシップ・グッズ販売など)が2億6,320万ポンドで前年より21%増加しました。
まだ公式発表前ですが、一部の財務分析では優勝とチャンピオンズリーグ決勝進出が重なった2025-26シーズンの総売上が史上最高の7億8,800万ポンドに達すると見込まれており、この数字がそのまま実現すれば、成績ひとつで売上曲線全体を押し上げる典型的な事例になるでしょう。
これは我が国で興行を牽引しているKBOだけでなく、プロクラブ全体の売上を合計しても及ばない金額です。マーケターとしてただただ羨ましい限りです。
空間活用とF&B
スタジアムを現地で訪れて試合観戦の感想を残しているいくつかのサッカートラベルブロガーの記事を読むと、エミレーツのコンコース(観客席後方の通路兼施設スペース)は広く設計されており、普段は移動がしやすいという評価が多かったです。
ただしハーフタイムのように需要が一斉に集中する時間帯には、広い通路でも列が完全に消えるわけではないという感想も見られました。飲食ではステーキ・チキンバルティ(スパイスを使ったカレーソース)パイが定番メニューとされ、ヴィーガンパイも販売されていますが、むしろこちらが予想より早く売り切れるという声が繰り返しあり、かなり人気があるようです。
コンコース設計とメニュー構成にこれほどまでに力を入れる理由は、結局完売が続くスタジアムほどF&B売上と滞在時間がそのまま客単価に直結するためであり、この点は国内クラブがスタジアムをリニューアルする際にも参考になる点だと考えます。
以前の投稿で取り上げたkt wizパークの場合も、コンコース構造ではないにもかかわらず入念に考え抜かれたソリューションが大きく成功したように、これも滞在時間と客単価につながる同様の話だと思います。

出典: arsenal.com エミレーツ・スタジアム紹介ページのキャプチャ
地域密着と経済効果
アーセナルが最近公開した経済・社会的影響レポート(2022-23シーズン基準)によれば、クラブが英国経済に与えた貢献額は6億1,600万ポンドで、そのうちホーム自治体であるイズリントン地区だけで4億2,500万ポンドが還元されたとしています。
英国全土で4,400件以上の雇用を、イズリントン地域だけで1,600件以上の雇用を支援し、英国の税収に2億2,800万ポンドを寄与したと発表しており、このシーズンの1年間でエミレーツを訪れた観客数は160万人に達しました。
クラブは人口密度の高いイズリントンの敷地の制約を考慮しつつも、スタジアム設計を手掛けたポピュラス(Populous)と再び協力して座席数を7万席前後まで増やす増築案を検討しており、検討初期に出ていた8万席程度の基準では工事費が5億ポンド程度と見積もられていました。
ただしまだ確定した計画ではなく、密集した住宅地に囲まれた立地特性から交通インフラの問題も絡むため、実際の着工までは時間がかかる見込みです。

資料出典 : ハイバリー・スクエア公式サイト
ハイバリーの遺産 — 消えたホームスタジアムが残したもの
ここはぜひ触れておきたかった点です。
アーセナルが現在のエミレーツ・スタジアムに移転する前、1913年から2006年まで93年間ホームスタジアムとして使っていたのがハイバリー(正式名称:アーセナル・スタジアム)です。
移転後に取り壊されたハイバリー敷地は2009年に725戸規模の住宅団地「ハイバリー・スクエア」として再生されましたが、興味深いのはこの再開発過程でクラブがスタンド全体を完全に壊さなかった点です。
1930年代にアールデコ(装飾性の強い1930年代の建築様式)で建てられ、英国の格付け文化財保護の対象(Grade II)に指定されていたイーストスタンド正面部とウエストスタンドの外観はそのまま保存し、その背後にアパートを載せ、かつてグラウンドがあった場所は住民のための中央庭園として残しました。
イーストスタンドのマーブルホール(大理石仕上げのロビー空間)やハーバート・チャップマン監督の胸像、選手用トンネルまで原型のまま残されており、2009年には当時の監督アルセン・ベンゲルが再開発の完成式に出席し、同年の国際不動産見本市MIPIMで特別審査員賞を受賞しました。
個人的にこの事例が興味深かったのは、クラブが実際にプレーしていたグラウンドは消えても、ファサードや象徴的なモニュメントだけ残しておけば、その空間は依然としてファンにとって巡礼地として機能するという点です。
マーケティングの観点から見ると、これは単なる不動産開発ではなく、ブランドの歴史資産を物理的に保存して次世代のファンにまでつなげる作業に近いと感じ、個人的にも非常に印象的でした。

出典: ウィキペディア『Highbury Square』記事に掲載された航空写真(Wikimedia Commons)のキャプチャ
Kリーグ1と比較すると
国内に目を向けると、2025シーズンのKリーグ1もそれなりの興行記録を打ち立てた年でした。
レギュラーリーグの平均観客数は1万341人、シーズン累計有料観客数は204万7,564人でKリーグ2と合わせて300万人を超え、1人当たりの平均支払額を示す客単価も1万3,419ウォンで2013年の公式集計以来の最高値を記録しました。
アーセナルの平均観客6万217人と単純比較すれば規模はほぼ6倍の差がありますが、両リーグが示す流れ自体は似ています。
観客が満員になり客単価が上がるほど、放映権・スポンサーシップ交渉におけるリーグ自体やクラブが持つ交渉力も同時に高まるという点です。
アーセナルの今季売上が成績ひとつで7億ポンド台から8億ポンドに迫る水準まで跳ね上がると見込まれているのを見ると、結局マーケティング組織ができる最も重要なことは、成績が良くなったときにその上昇分を取り逃がさないように、シーズンチケット・メンバーシップ体系、ブランドヘリテージコンテンツ、地域社会プログラムを事前に整えておくことだと感じます。
今のすべてのプロスポーツクラブにとっても参考になる点だと思います。

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