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2009年の開場初期に夜間撮影されたマツダスタジアムの正面

マツダスタジアム観戦記 — 親会社なきカープ、カープ女子ブーム後に揺らぐ客席

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サイト運営者が直接執筆するプロスポーツマーケティングインサイト2026-09-19 · 閲覧 207
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目次 · 読了時間 約7分
  1. 観客動員とチケット
  2. 空間活用とF&B
  3. グッズと広告インベントリ
  4. 放映権と地域経済効果
  5. KBO・Kリーグと比べてみると
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日本プロ野球12球団の中で、創設以来一度も親会社を持ったことがないチームがたった一つだけあります。

読売は新聞社、阪神は鉄道会社、ソフトバンクは通信会社がオーナーを務める国で、広島東洋カープだけは最初から今まで、特定の大企業の名前を球団名に冠さずに歩んできました。

NPB各球団のスポンサー構造を一つずつ見ていくうちに、このチームで何度も足が止まり、せっかくなので球団の歴史と最近の観客動員の動向もあわせて調べてみることにしました。

カープの出発は1949年にさかのぼります。

原爆で焼け野原となった街に活力を取り戻そうという思いから、地元の自治体や地元企業が少しずつお金を出し合って作った市民球団が始まりでした。

広島城の別名「鯉城」と、流れをさかのぼって泳ぐ鯉のイメージにちなんで、チーム名を「カープ(鯉)」としたと伝えられています。

創設間もない頃に深刻な資金難に陥ると、市民が自ら樽を抱えて街頭に立ち、募金を集めた話は、今も球団史に欠かせない場面として語り継がれています。

その後、自動車メーカーのマツダが筆頭株主として参加しましたが、マツダが球団を丸ごと抱え込む形に変わったわけではありません。市民株主と地元企業が分散して出資する形を今も保っていることが、12球団の中でほぼ唯一の例とされる理由です。

2009年の開場初期に夜間撮影されたマツダスタジアムの正面

出典: Wikimedia Commons(撮影: HKT3012、CC BY-SA 4.0) · 2009年の開場初期の夜間撮影

観客動員とチケット

2009年に開場したマツダスタジアムは、固定席3万350席に立ち見を加えると最大3万3000人を収容できる規模です。

正面の名称にマツダの自動車ブランドのスローガン「ズームズーム(Zoom-Zoom)」をそのまま掲げていること自体、地元を代表する企業が球団ではなく球場だけに名前を掲げたという、このチームならではのスポンサー構造を物語っています。

ところが、2026年シーズンに入ってこの球場の客席が気になる状況です。

現地の報道によると、4月の主催14試合の観客動員は38万5574人で12球団中8位、1試合平均2万7541人ではセ・リーグ最下位まで落ち込みました。

7月中旬には、観客が1万9000人台まで減った試合もありました。

ただ、シーズンが進むにつれて雰囲気はやや持ち直し、8月25日時点の集計では1試合平均が2万8533人まで上がってきており、反発の余地は残されています。

チケット価格は、曜日や対戦相手によって上下するダイナミックプライシングではなく、内野指定席Aで4200円の均一価格を保っているため、ファンにとっては購入のタイミングをあまり悩まなくて済みます。

2009年の開場初期のマツダスタジアムの応援席

出典: Wikimedia Commons(撮影: ElCapitanBSC、CC BY-SA 2.0) · 2009年の開場初期の応援席

空間活用とF&B

マツダスタジアムが開場当初から掲げた設計思想は、アメリカのメジャーリーグのボールパークの流儀を日本にそのまま持ち込むことでした。

1階席の最後方には幅の広いコンコース(内野12m、外野8m)が途切れなく続いていて、グラウンドを見ながら球場を1周(約600m)でき、座席自体もアメリカの球場並みの幅50cm・奥行き85cmの規格を確保しています。

寝そべって観戦できる席や、バーベキューを楽しみながら野球を見るテラス席など、名前からして遊び心のある体験型の座席もいくつかあり、こうした空間設計がかつて「カープ女子」と呼ばれた若い女性ファン層を引きつけるうえで決定的な役割を果たしたと、複数のマーケティング分析記事が口をそろえて指摘しています。

面白いのは、球場の外にもかつて、チケットを買わずに試合を観られる無料の観戦エリアが正式に運営されていたことです。

開場初期に球団の人気を高めるための仕掛けでしたが、あるカープファンのブログの整理によると、その後カープの人気が実際に回復して座席の需要が増えたことで、この無料エリアは廃止されたことが確認できます。

今はなくなった空間ですが、人気がないときは無料エリアまで作って人を集め、人気が出ればその場所をまた有料席に戻す柔軟さが目を引きます。

2009年に撮影されたマツダスタジアムの無料観戦エリア(現在は廃止)

出典: Wikimedia Commons(撮影: HKT3012、CC BY 3.0) · 2009年撮影、現在は廃止されたエリア

海外の観光レビューサイトに寄せられたある訪問者の口コミには、7回裏に静寂を破って観客全員が赤い風船を一斉に空へ放つ恒例行事が、この球場で最も印象的な瞬間だったという感想が書かれていました。

ビールを持った売り子が座席の間を回ってくれるので、席を立たずに観戦を楽しめたという評価も目を引きました。

現役マーケターの目から見ると、こうした些細に見える儀式の一つひとつが、球団ブランドを「一度は行ってみたい体験」として位置づけるうえで大きな役割を果たしているように思います。

グッズと広告インベントリ

マツダスタジアム正面1・2階にあるカープ公式グッズショップは、2023年1月に大規模リニューアルされ、売り場を広げて陳列棚を低くし、商品が一目で見渡せるように変わりました。

球団公式サイトが公表しているオフィシャルスポンサーの顔ぶれを見ると、マツダを軸に、リョービ、アサヒビール、コカ・コーラ ボトラーズジャパン、イズミ、エディオン、セブン‐イレブン・ジャパン、ダイソー産業、常石グループなど、9業種の代表企業が名を連ねています。

ただし、欧米のプロスポーツでよく見られるユニフォーム前面の広告はNPBの特性上存在しないため、広告インベントリは球場内のフェンス広告や、特定の企業名を冠したスポンサードゲームが中心になっています。

2013年のリニューアル当時のマツダスタジアムのカープグッズショップ

出典: Wikimedia Commons(撮影: HKT3012、CC BY-SA 3.0) · 2013年のリニューアル当時のグッズショップ

放映権と地域経済効果

カープのホームゲームは、ラジオ中継については地元放送局のRCC(中国放送)が全試合を担当し、テレビ中継はRCCと広島テレビ(HTV)が分担するほか、J SPORTSが主催試合の全日程を生中継・見逃し配信でカバーしています。

地元放送局がラジオの全試合中継権を事実上握っている構造は、首都圏の大型球団よりもむしろ地域との結びつきが強いことの裏付けでもあります。

球場の運営構造も興味深く、広島市が指定管理者としてカープ球団を選定し、球場内の飲食・広告看板の運営権を任せる代わりに、総事業費約144億7500万円のうち借入金の返済を球場使用料でまかなうよう設計しました。

この仕組みが定着したことで、球場は2015年に約7億6000万円、2016年に約14億4600万円の純利益を出したと報告されており、施設そのものが球団の収益モデルの一部に組み込まれた例とされています。

KBO・Kリーグと比べてみると

KBOの10球団はすべて企業がオーナーを務める企業球団体制で、市民が株式を分け合う市民球団はKBOには存在しません。

一方、Kリーグに目を向けると、大邱FC、仁川ユナイテッド、城南FC、江原FC、富川FC1995のように、地方自治体と市民株主が中心となった市民球団がかなりの割合を占めています。

カープの事例は、この二つの中間にあると言えます。特定の企業が球団を所有しているわけではないものの、マツダという地元を代表する企業が筆頭株主として長く安定した資金源の役割を果たしてきたのです。

Kリーグの市民球団が毎シーズン予算の確保に苦労しているという話をよく耳にする立場からすると、地元企業一社が大株主として座り続けながらも球団名に社名を付けないカープの折衷案は、マーケティング的にじっくり考えてみる価値のある点だと思います。

観客動員が揺らぐ今のカープを見て、かえって興味深いのは、かつてスポーツマーケティングの成功事例として数多く引用されたチームでも、近くに新たな競合施設ができて成績が停滞すれば、すぐに客席の空席が増えるという事実です。

2024年に開場したサンフレッチェ広島の新本拠地、エディオンピースウイング広島へ地域の関心が移ったという分析もあるのを見ると、「カープ女子」神話ひとつで一生安泰でいられるブランドはないのだと、改めて実感します。

親会社がなくても70年以上生き抜いてきたこの球団が、次の局面をどう乗り越えていくのか、マーケターとして引き続き見守りたい事例です。

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