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一昨日8月29日、リグレー・フィールドで行われているイベントのニュースを見て、思わずノートパソコンを開きました。
シカゴ・カブスが1876年にナショナルリーグの創設メンバーとして参加してからちょうど150年の節目にあたり、球団はこの週末(8月29〜30日)の2日間にわたって大規模な記念イベントを開いていました。
クラーク通りとアディソン通りが交わる角には、4つの時代の球団史を刻んだ常設時計塔「ファウンダーズ・クロック」がこの日初めて公開され、ファン投票で選ばれた1876年から現在までの歴代最高の選手・監督40人余りが「150周年チーム」として発表されました。
マーケター目線でより意味のあるニュースは、実は別にありました。
この150周年とほぼ同じタイミングで、リグレー・フィールドが2027年7月13日のオールスターゲーム開催を勝ち取ったというニュースです。
1990年以来37年ぶり、通算では1947年・1962年・1990年に続く4度目とのことで、創設150年を超える球団が今なお新たな「初」や「最多」の記録を積み重ねているという点が興味深く感じられました。
そこで今回は、リグレー・フィールドをマーケティングの視点から掘り下げてみることにしました。

出典: Wikimedia Commons(David Wilson, 2017)・CC BY 2.0
写真右上に掲げられている白い旗が、カブスを象徴する「Wフラッグ」です。
1937年にスコアボードが新設されて以降、勝てば白地に青のW、負ければ青地に白のLの旗を掲げる習慣が続いていて、テレビ中継もインターネットもなかった時代、L電車(高架鉄道)で帰宅するファンが空を見上げるだけで試合結果がわかるようにという実用的な理由から始まった慣習だそうです。
もともとは今と正反対の青地に白いWだったのが、1982年のアーニー・バンクスの永久欠番セレモニーを機に今の配色に変わったという話も面白く感じました。

出典: カブス公式サイトの150周年記念ページのキャプチャ・球団公式画像
観客動員とチケット
シカゴ・カブスは2025シーズン、ホーム79試合で平均3万7259人を動員し、メジャーリーグ全体で6位に入りました。
2019シーズン(3万8208人)以来の好記録とのことで、この勢いを受けて球団は2026シーズンのシーズンチケット価格を平均5〜8%(全体平均6%)値上げしました。
ただし2026シーズンは中間時点(ホーム40試合累計139万7964人、1試合平均3万4949人)で見ると、順位は9位まで一段階下がっている状態です。
チケット流通プラットフォーム、シートギークの出品価格を分析したある調査によると、2026シーズンのカブスのホーム戦最安値の平均は43ドル前後でリーグ7位圏内、カブスがアウェーに行く際に相手球団のチケット価格を押し上げる効果もニューヨーク・ヤンキース、ロサンゼルス・ドジャースに次いで3番目に大きかったそうです。
目を引く変化は、シーズンチケットのウェイティングリストです。
カブスは2003年からシーズンチケットのウェイティングリストを運用し、一時は待機者が10万人を超えていましたが、2023年11月にこのリストを完全に廃止し、20試合・41試合・81試合などのパッケージを即時購入できる形に切り替えました。
20年以上続いた「行列待ち」型の需要管理をやめ、むしろ商品構成を細分化してアクセスしやすさを広げる方向に方針を転換したわけです。

出典: Wikimedia Commons(Ron Cogswell, 2012)・CC BY 2.0
球場ならではの象徴 — 蔦のフェンスとルーフトップ
リグレー・フィールドと聞いてまず思い浮かぶのは、外野フェンスを覆う蔦のイメージでしょう。
1937年当時のオーナー、フィリップ・K・リグリーがカリフォルニアで見たような公園らしい球場の雰囲気を作りたいと考え、造園業のクレーバー家に依頼してアメリカヅタと日本原産のツルウメモドキを混ぜて植えたのが始まりだったそうです。
今でも打球がこの蔦の中に消えると自動的に二塁打(グラウンドルール・ダブル)になる規定が残っていて、この一枚のフェンスが100年近く球団のアイデンティティであり、マーケティング資産として機能してきたわけです。
蔦と同じくらい特徴的なのが、球場の外にある屋上席、いわゆる「リグレー・ルーフトップ」です。
1980年代から近隣の建物オーナーたちが屋上に座席を設置し、入場料を取るようになり、一時はこの屋上席ビジネス全体の売上が年間700万ドル規模にまで成長しました。
2000年代初頭、球団と屋上のオーナーたちは屋上席の売上の17%、屋外広告の売上の11%を球団に分配する契約を結び、2009年に球団を買収したリケッツ一族は屋上のあるビル16棟のうち11棟を丸ごと買い取りました。
契約が切れた残り1棟については2024年から訴訟が続いており、球団側が法廷書類でこの業者を「寄生的」とまで表現したほど、感情的なもつれが深まっています。
放映権のように線引きがはっきりしない「球場の外からの観戦権」を100年近く放置してきたツケが、こういう形でここまで大きな争いになるのだなと感じました。

出典: Wikimedia Commons(Cole Camplese, 2016)・CC BY 2.0
スペース活用とF&B
1914年に建てられた球場なので、コンコース(観客席後方の通路スペース)が狭いという評価は根強くあります。
現地の球場専門レビューサイトは、1階コンコースが狭く観客の動線が複雑で、座席がグラウンドから15列以上離れていると階段やスロープを通る必要があると指摘し、食事部門では5点満点中2点というレビューもありました。
同じレビューは、球場の外のリグリービル一帯で食事を済ませたほうがいいと勧めていますが、シカゴスタイルホットドッグや2ポンドのノースサイド・ツイスト・プレッツェルといった球場名物は今も人気が高いそうです。
コンコースが狭いという弱点を球団が正面から突破した形が、球場西側入口のすぐ外にある「ギャラガー・ウェイ」です。
約8090平方メートル(サッカー場1面分に近い広さ)の敷地に、173室規模のブティックホテル「ザカリー」(リグレー・フィールドを設計した建築家ザカリー・テイラー・デイビスの名前にちなんでいます)とオフィス・商業施設、屋外イベント広場を組み合わせ、試合がない日でもコンサートや野外上映、マーケットといったイベントで人を集めています。
この開発は、オーナーであるリケッツ一族の不動産系列会社ヒコリー・ストリート・キャピタルが直接手がけたもので、コンコース内では増やせない滞在時間や消費を、球場の壁の外の不動産で生み出した事例と言えそうです。

出典: Wikimedia Commons(Sea Cow, 2022)・CC BY-SA 4.0

出典: Wikimedia Commons(Adc95, 2022)・CC BY-SA 4.0
グッズ(MD)と広告インベントリ
カブスは2024年からシャンバーグに本社を置く通信企業モトローラと複数年契約を結び、ユニフォームの袖にロゴパッチを付けています。
正確な金額は公表されていませんが、球団の営業担当幹部がメディアの取材に「リーグ上位クラス」と語ったことを踏まえると、リーグ平均(年700万〜800万ドル程度)を大きく上回り、最上位クラスのヤンキースやブルージェイズ(年2000万ドル前後)に近い金額と見られます。
興味深いのは、ネーミングライツ(施設に企業名を付けられる権利)の扱い方です。
カブスは「リグレー・フィールド」という球場名そのものは絶対に売りませんが、その内部の空間はほとんど細かく切り分けて販売しています。
西側広場とゲートは保険仲介会社のギャラガー(「ギャラガー・ウェイ」)が、レフト側フェンス上の広告板と今後建設予定のアディソン・シェフィールド交差点の入口は保険会社のウィントラスト(「ウィントラスト・ゲート」)が、正面マーキー看板下のパネルはトヨタが、中層のプレミアムラウンジは保険代理店のアシュアランス(「アシュアランス・クラブ」)がそれぞれ名前を冠しており、外野のブリーチャーズ(外野立見・自由席エリア)にはバドワイザー、内部のVIPラウンジにはアウディのブランドが付いています。
球場名そのものは絶対に売らず、その中のすべてのパーツを個別商品として切り分けて売る戦略というわけです。
クラーク通り3637番地にある常設のチームストアと試合日限定のポップアップショップでは、リグレー・フィールドの形をしたスノードームのようなグッズが安定して売れており、今年は150周年記念ロゴをあしらった限定商品ラインも別途発売されました。
放映権と地域経済効果
カブスの中継は、2020年にシンクレア・ブロードキャスト・グループと球団が共同設立したリージョナル・スポーツ・ネットワーク(特定地域だけに配信されるケーブルのスポーツ専門チャンネル)「マーキー・スポーツ・ネットワーク」が担っています。
2025年にはコムキャストとの再送信交渉が決裂し、チャンネルがより高額なプランに追いやられる混乱がありましたが、2026年3月からはHulu + Live TVとPrime Videoでも視聴できるようになり、配信網を再び広げました。
フォーブスが2026年に発表した球団価値は52億5000万ドルでメジャーリーグ4位クラス、売上は5億9900万ドル、入場料収入は2億4000万ドル、営業利益は5800万ドル規模です。
球団と球場が地域に与える効果もかなりのものです。
リグリービル周辺のバー・レストラン・店舗80軒余りが球場効果の直接的な影響圏内にあり、この商圏が支える雇用が7000人分、アウェーファン1人が試合ごとに地域で使う金額は平均104ドルという調査もあります。
ここに2027年7月13日のオールスターゲームが加われば、3日前後のイベント期間中に集まる来場者の消費が地域経済にさらに上乗せされることになりそうです。
KBO・Kリーグと比較すると
カブスは1876年のナショナルリーグ創設メンバーなので今年で150年、リグレー・フィールドは1914年開場なので今年で112年目を迎える球場です(メジャーリーグではフェンウェイ・パークに次いで2番目に古い現役球場です)。
韓国国内で親会社が変わらずに最も長く続いている球団は、1982年1月創設のドゥサン・ベアーズ(前身OBベアーズ)で今年44周年ですが、これだけを見てもリーグの絶対的な年数自体が3分の1にも満たないことがわかります。
この歴史の差以上に目を引いたのは、ネーミングライツの扱い方の違いでした。
韓国国内ではハンファ生命ボールパークやサムスン・ライオンズ・パークのように、球場を所有・運営する親会社が球場名全体を自社ブランドで冠するのが一般的です。
リグレー・フィールドはその正反対で、球場名は100年以上手を付けないまま、その中の広場・ゲート・ラウンジ・ブルペン席の一つひとつに異なる第三者企業の名前を付けて売る方式を選びました。
ブランド資産をひとまとめにして売るか、細かく切り分けて複数箇所で売るかの違いですが、結局どちらも「誰の名前を球場に残すか」という同じ問いに、それぞれ違う答えを出したということなのだと思います。
150周年記念式典と37年ぶりのオールスターゲーム誘致という、表面上はまったく別の2つのニュースを並べてみると、結局は一つの物語になっていました。
古い資産であればあるほど、新しいイベントを一つずつ重ねてブランドを更新し続けなければならないこと、そしてその更新コストを球場名からではなく、その中の細かな空間から捻出してきたということです。
韓国国内の球団もいつか「古くなった球場をどう新しく売り続けるか」という同じ宿題に直面することになるはずで、リグレー・フィールドが100年以上かけて出してきた答え方は、一つの参考になり得るのではないかと感じました。

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