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少し前のインテュイット・ドームの投稿でkt wizのAIスタジアムを次回詳しく扱うと約束しましたが、今回はきちんと整理してみようと思います。
kt wizは2013年に創設されたKBOリーグの末っ子球団です。通信会社が親会社ということもあり、ファンの間でも自然と「技術に強い球団」というイメージが定着しましたが、実際に中身を見ればそのイメージがただ作られたものではないことがわかります。
親会社であるKTのDNAを球団運営全般に最もよく継承・発展させた事例であり、私はこの球団を国内プロスポーツ球団の中でも非常に模範的なケースだと考えています。
これらすべての試みの頂点にあるのがまさに「KT AI STADIUM」です。
KT AI STADIUM — 事業概要
ktスポーツとKTが共同で推進した事業で、2025年の開幕戦から本格運用に入りました。総事業費は約10億台ウォン規模と伝えられていますが、新設球場1つを建てる費用と比べれば大きくない投資で、かなり多くの変化をもたらしました。
このような取り組みが評価され、kt wizは2025年12月に第21回大韓民国スポーツ産業大賞で国務総理表彰を受賞しました。2019年の大統領表彰に続く二度目の受賞であり、一朝一夕に作られた成果ではないことが改めて確認されました。

資料出典:kt sports ホームページ
AI電光掲示板と混雑度案内
最も目を引くのは国内初導入のAI特化型専用電光掲示板です。従来の電光掲示板が中継画面や広告の上映用途であったのに対し、この掲示板はAIが生成したコンテンツをリアルタイムで表示することを前提に設計されています。
さらにウィズパークのAI混雑度案内機能も組み合わせ、球場の混雑度をリアルタイムで分析・管理する用途にも使われていました。
球団の統合運営センターにあるAI CCTVベースの知能型映像解析ソリューションが物体認識と混雑度を同時に分析し、PCやモバイルで観客の混雑度をリアルタイムに提供。試合終了後にはこの電光掲示板を通じて退場動線の混雑状況をそのまま案内します。実際に安全事故の予防や退場時のボトルネック緩和という実質的な効果につながっている点で、見せ物のための技術ではなく、運営上の課題を実際に解決するために使われているという印象を受けました。

資料出典:kt sports ホームページ
外国人ファン特化戦略
ktウィズパークが位置する水原地域の特性もこの球団の戦略にそのまま反映されていました。
周辺には米第8軍司令部、韓米連合司令部、平沢ハンプリーズや烏山(オーサン)米軍基地があり、外国人ファンの比率が他球団より高くなる環境です。
kt wizはこの点を的確に捉え、球団アプリ「wizzap」の英語版を2024年3月に正式ローンチし、国内プロ球団として初めて外国人向けオンライン予約システムのサポートも開始しました。
韓米連合軍司令部とは所属部隊員向けのスポーツ観戦機会提供やwizzap英語版の活用に関する業務協約も結びました。関係者によれば、外国人会員数は2024年の1,591名から2025年は3,194名へと100%増加し、1人当たりの平均チケット購入数を考慮すると、2025年の外国人来場者数は約7,346人に達する見込みだとしています。

資料出典:kt sports ホームページ
AI電光掲示板を活用したリアルタイム翻訳字幕サービスも同じ流れの取り組みです。
試合案内やイベント内容を外国人観客がリアルタイムで理解できるように翻訳して表示する方式で、言語の壁によって応援のタイミングを逃したりイベント参加をためらったりする外国人観客の不便を技術で直接解消した事例でした。
AIビクトリ秘書 — チャットボットと顧客対応
顧客対応の分野では「AI ビクトリ秘書(빅또리비서)」が中核でした。
wizzapに搭載された生成型AIエージェントで、2025年5月のAICC高度化を通じてまず商用化され、その後9月6日に「KBOリーグ初」の対話型AIチャットボットエージェントという位置づけでwizzapアプリに正式リリースされました。
チケット予約、試合情報、事前駐車予約、球場案内はもちろん「私の勝率を教えて」「今日の試合はどうなると思う?」といった質問にもkt wizのデータを学習して答えるレベルに達していました。
従来のチャットボットが決まったキーワードにしか反応しないレベルだったのに対し、ビクトリ秘書はデータを自ら学習し、問い合わせが来る前から先回りして対応できる方式へと高度化しました。

資料出典:kt wiz ホームページ
対応件数の推移を見ても成長が明瞭です。
マーケティング担当者のインタビューによれば、2023年3月〜12月の対応件数は13,552件だったのが2024年には13,964件に増加し、2025年は上半期の6か月だけで既に11,276件を処理しており、年間で2万件以上、前年比約43%増が見込まれるとのこと。クレーム対応という、スポーツマーケティングで最も手間がかかりながらもおろそかにできない領域をAIで自動化し、顧客満足度と運営効率を同時に高めた形です。
ファン参加型AIコンテンツ
ファン体験の分野では「AIヒューマン」が目立っていました。
AIで創られた選手キャラクターがファンとリアルタイムで交流するイベントで、実際の選手のスケジュールやコンディションに左右されずにファンとの接点を継続的に作れる点で運営効率が非常に高いコンテンツでした。
さらに生成型AIでファン自身が参加して作る「ファンメイドAI応援歌」制作公募や、AIでファン個別のカスタムチアフルを制作して応援道具として活用する「AIチアフル」まで、ファンがコンテンツを受動的に消費するのではなく、直接制作に参加する範囲まで拡大していました。
AIスケッチの絵画大会やAIフォトブースといった体験型イベントも同じ流れにあります。

資料出典:kt wiz ホームページ
コンテンツ制作のAI内製化
球場の各所にある電光掲示板や店舗スペースのメディアウォール、球場正面のメディアファサードで上映される映像も生成型AIで制作している点が特に印象的でした。
季節ごと・試合ごとのテーマに合わせて映像を常に作り続ける必要がありますが、この制作プロセスの一部を生成型AIで内製化することで外注制作費の負担を大幅に削減したと言います。コンテンツの量と新鮮さを維持しつつコストを下げるという、マーケターにとって理想的な組み合わせを実際に実現した事例でした。
海外球団のベンチマーク対象に
こうした成果が韓国/日本のプロスポーツ業界でも話題となり、2024年以降、KリーグやKBLはもちろん、日本の阪神タイガース、楽天(日本と台湾両方)、西武ライオンズといった海外球団までもがkt wizのAIスタジアムやマーケティング手法をベンチマークしに来ました。
国内球団が海外球団のベンチマーク対象になるケースは珍しいことを考えれば、この球団が生み出した変化の大きさが推し量れます。
新設なしでも可能な理由
ここでぜひ指摘しておきたい点があります。
インテュイット・ドームのように莫大な資本を投じて設計段階からAI技術を前提に新しく建てる海外球場と異なり、kt wizは1989年に建てられた既存の球場の上にこれらすべてを載せました。
新設でなければ答えがないと考えられてきた課題を、顧客が実際に必要とするポイントを的確に見極めて一つずつ解決する方式で取り組んだのです。華やかな新設球場を持つ海外球団のアプローチが「最初から描き直す」方式だとすれば、kt wizのアプローチは「あるものの上に必要な分だけ載せる」方式でした。この違いは国内のほとんどの球団にとってはるかに現実的な参考になります。新しい球場を建てられないという理由で技術導入を先延ばしにする必要がないことを、kt wizが自ら証明して見せたのです。
実際の成果とまとめ
実際の成果も伴っています。kt wizは2025シーズン、創設以来初めて100万人観客の達成が目前に迫っており、観客の62.6%が水原と首都圏・京畿道から来ている点から、この球団が首都圏南部圏域のプロスポーツのハブとしての役割を果たしていることも確認できます。
整理すると、kt wizのAIスタジアムは華やかな見せ物のための技術ではなく、観覧の不便を減らしファン参加を増やすことに焦点を当てた成果物でした。
新設球場という前提なしでもここまで到達できることを確認しただけで、国内の他の球団にとっては十分に意味のある参考事例になるだろうと考えます。

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