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1928年ごろ、まだ建てられていないバライードスの敷地の芝生で図面を広げるハンディキャップと仲間たちの白黒写真

ラ・リーガ バライードス後記 — セルタ・ビーゴ、年80万ユーロで50年借りた本拠地とW杯2030への挑戦

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サイト運営者が直接執筆するプロスポーツマーケティングインサイト2026-10-12 · 閲覧 108
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目次 · 読了時間 約13分
  1. トラム路線に押し出されたセルタと1928年12月30日のバライードス
  2. セルタ・ビーゴはどんなチームか
  3. 観客とチケット: 工事中も座席を売る方法
  4. スタジアムの所有と賃貸の仕組み: 年80万ユーロ、50年契約
  5. スタジアムツアーとF&B: 博物館が先に稼ぎ始めました
  6. 2030年ワールドカップの候補地、まだ開いている扉
  7. 高尺スカイドームと比べてみると
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年80万ユーロ余り。セルタ・ビーゴが本拠地の持ち主であるビーゴ市に払うことになった使用料の出発点で、契約期間はなんと50年です。

スタジアムのニュースというと、私は新築計画やネーミングライツ(施設に企業名をつける権利)の金額から探すほうですが、今回のセルタの話は、建物を誰が所有し、その中で誰が稼ぐのかを整理し直した点が面白いと思いました。

現役のマーケターとして、この仕組みが気になったので、クラブの公式発表と現地報道、スタジアムの観戦ガイドを順番に突き合わせてみました。スタジアム名は2018年からABANCAを頭につけて呼ばれますが、この記事では簡単にバライードスと書きます。

ナイトゲームでセルタのマフラーを掲げるファンの向こうに、観客で埋まったABANCAバライードス

写真: Estevoaei · 出典: Wikimedia Commons · ライセンス: CC BY-SA 4.0 · 2024年1月3日撮影、ナイトゲームでセルタのマフラーを掲げるファンと観客で埋まったABANCAバライードス

トラム路線に押し出されたセルタと1928年12月30日のバライードス

バライードスは、セルタが望んだ引っ越しではありませんでした。ラ・リーガのスタジアム史紹介によると、セルタが創設時から使っていたコイア(Coia)競技場は、ビーゴに新しく敷かれるトラム路線のために取り壊される予定で、その代わりに造られたのが今のバライードスです。

同じ紹介文は、スタジアム名がハシバミの木が多い土地を意味する古い地名abeladíosに由来すると説明していますが、この語源は紹介文一つでしか確認できなかったため、参考として記しておきます。

開場日は1928年12月30日で、最初の試合でセルタがレアル・ウニオン・デ・イルンを7-0で破ったと記録されています。ラ・リーガの別の記事には6-0とありますが、史料紹介と英語版ウィキペディアは7-0なので、7-0に従いました。

クラブ自体の出発点も興味深いものです。英語版ウィキペディアは、セルタが1923年8月23日にレアル・ビーゴ・スポルティングとレアル・フォルトゥナという二つのクラブが合併して生まれたと説明しています。

その合併を導いた中心人物として挙げられるのがスポーツ記者のマヌエル・デ・カストロ、通称ハンディキャップ(Hándicap)で、彼のウィキペディア項目は、1915年の最初の試みが頓挫したあと、1923年に両クラブの合意を取りつけたと記しています。

下の写真はウィキメディア・コモンズに投稿された1928年ごろのもので、ファイル名によれば、まだ建物が建つ前のバライードスの敷地で、ハンディキャップが仲間と図面を広げている場面です(左から2人目)。マーケターの目で見ると、二つのファン層を一つのチームに束ねて、街全体の応援対象を作ったことが、このクラブ最初のブランディングの仕事だったことになります。

1928年ごろ、まだ建てられていないバライードスの敷地の芝生で図面を広げるハンディキャップと仲間たちの白黒写真

写真: 作者不明 · 出典: Wikimedia Commons(元の出典はMoiceleste.comと表記) · ライセンス: パブリックドメイン · 1928年ごろ撮影、古い写真

セルタ・ビーゴはどんなチームか

セルタの今のシンボルカラーである空色と白はガリシアの旗を表すといい、初期のホームユニフォームは赤いシャツに黒のショーツ、青のソックスだったとウィキペディアは伝えています。

2025-26シーズンはクラウディオ・ヒラルデス監督のもとでラ・リーガ6位(勝ち点54、14勝12分12敗)となり、ヨーロッパリーグではリーグフェーズ16位でプレーオフを突破して、PAOK(合計3-1)とリヨン(合計3-1)を順に破ったあと、準々決勝でフライブルクに合計1-6で敗れました(シーズンの記事による)。

ボルハ・イグレシアスがリーグ14ゴール、全大会18ゴールでチーム内の得点王でした。おかげで2026-27シーズンもヨーロッパリーグに出場することになったと、クラブはユニフォームコレクションの発表文で述べています。

この記事を書いている10月8日に確認したラ・リーガ公式の順位表では、7試合で勝ち点7の14位です。

同じ発表文で最初に目に入るのは、写真のユニフォームです。空色のホームと紺のアウェーのユニフォームの前面中央に、エストレージャ・ガリシア0,0(ノンアルコール)のロゴが大きく入っていて、クラブはこのガリシアのビールブランドと15年以上一緒にやってきたとしています(契約期間と金額は非公開)。

ユニフォームの前面はガリシアのビール、スタジアム名はガリシアの金融会社ABANCAが占める構造で、地元企業2社がクラブの顔を分け合う、典型的な地域密着型のモデルに読めます。

エストレージャ・ガリシア0,0のロゴが入った2026-27シーズンの空色のホームと紺のアウェーのユニフォームを着たセルタの選手3人

写真: RCセルタ公式プロモーション画像 · 出典: rccelta.es · 2026年7月1日公開、2026-27シーズンのホーム・アウェーユニフォーム

訪問者として知っておきたい点は、英語圏のスタジアムガイドにまとまっています。最も熱心なホームのファンはゴール裏のグラダ・デ・ゴル(Grada Gol)に座り、セルタラス(Celtarras)というサポーター集団が歌をリードするそうです。

試合が満員になることは珍しく、当日の現地購入も普通はできて、価格帯は上のほうで約20ユーロからVIPボックスの約110ユーロまでとのことです。スタジアムは歩いて行くには遠く、駐車スペースもごく限られるため、バスやタクシーをすすめる説明もあります。

ただ、グラダ・デ・ゴルは今、建て替え中なので、このエリアの座席事情は訪問前にクラブの案内を確認するのが安全です。

観客とチケット: 工事中も座席を売る方法

2024-25シーズンの第1〜18節では、バライードスは前の年の同じ期間より観客が28.4%増えて1部のスタジアムで増加率1位となり、リーグ全体の増加率は10.9%でした(現地メディアの報道で、平均観客数は記事には載っていません)。

この上昇が続くなか、クラブは最後に残った古いスタンドであるグラダ・デ・ゴルの建て替えを控えていました。2025年5月7日の報道は、クラブがグラダ・デ・ゴルの建て替えのため、次のシーズンは通常より4,080席少なく運営すると案内して、新規シーズンチケットの順番待ちリストを開き、新しく入れる枠はごくわずかだろうと警告したと伝えています。

建て替えが終わるとこのスタンドで2,400席増え、会員証(カルネ・セルティスタ)はタイプによって30〜80ユーロで、10ユーロの金券が付きます。

工事の日程と収容人数は、報道によって少しずつ違います。エル・エスパニョルの6月5日の報道は、6月15日からグラダ・デ・ゴル下段の最初の5列に792席を設置し、完成目標を2027年初めとしたのに対し、8月の報道は、新シーズンの開幕に合わせて固定席791席が設置され、年内に再開場の予定だと書きました。

スタジアムの収容人数も、2万2,900人(スタジアムDB、4月)、2万4,870人(ウィキペディア)、3万1,800人(スタジアムガイド)と資料ごとに違うため、この記事では一つの数字に断定しませんでした。

マーケターの目には、普段は当日現地購入ができるスタジアムが、工事のシーズンには新規加入を止めて順番待ちリストで需要を調整するという対比が、妙に印象的でした。座席が減る時期に売る側が決められるのは、価格より、誰に先に売るかだったわけです。

スタジアムの所有と賃貸の仕組み: 年80万ユーロ、50年契約

バライードスの所有者はビーゴ市で、セルタがそれを運営しています。クラブの公式発表によると、2026年4月にマリアン・モウリーニョ会長とカバジェロ・ビーゴ市長が、新しい使用契約の手続きを正式に進めました。

期間は初期50年で最長75年まで延長でき、従来の契約は2034年に満了する予定でした。市長は、1か月以内に異議がなければ自動的に確定すると説明し、クラブ会長は、新しい世代もバライードスでセルタを楽しみ続けられるようになったと述べました。

フットボール・グラウンド・ガイドの9月8日付の報道は、経済・行政の条項に異議なく最終承認されたと伝えています。

お金の話はスタジアムDBがまとめています。使用料は初年度が年802,837ユーロで、毎年2%ずつ上がり、2076年には220万ユーロに近く、2101年には350万ユーロを超えます(50年と75年を2%の複利で計算した値と合います)。

ヨーロッパの大会に出るかどうか、1部に残るか降格するか、スタジアムへの投資、コンサートの開催などによって使用料が変わる可能性があるそうです。フットボール・グラウンド・ガイドは同じ金額を802,800ユーロと書いていて、末尾の表記が違うだけです。

フットボール・グラウンド・ガイドは、この契約でセルタがサッカー以外のイベントの開催、映像・放送権の商業化、スタジアムに商業的な名称をつける権利を持ち、市は周辺エリアに対する権利を保つとまとめています。

スタジアム名のほうは、2018年6月のABANCAとの契約が最初のネーミングライツでした。最低10年の契約で金額は公表されず、当時の報道は、新しい企業向けホスピタリティ施設が年約600万ユーロの追加収入を生むという見通しと、再建の総事業費が4,000万ユーロと当初の見積り(3,000万ユーロ未満)を超えたという内容を併せて伝えました。

マーケターの視点で見ると、今回の50年契約の核心は使用料そのものより、クラブがスタジアムの名前と放送コンテンツ、イベント収入を一つにまとめて長期の計画に入れられるようになった点です。成績によって使用料が上下するように設計した点も、市とクラブがリスクを分け合う構造に見えます。

スタジアムツアーとF&B: 博物館が先に稼ぎ始めました

セルタはクラブの発表で、2025-26シーズンの初年度にスタジアム体験プログラム(セルティスタ・エリア)の参加者が1万人を超え、そのうち約60%がABANCAバライードスのツアーだったと述べています。

ナイトツアー、レジェンドと回るツアー、ヨーロッパの試合前ツアーを合わせたスペシャルツアーは1,100人以上、試合日の体験(旗手での入場、エスコートキッズ、試合前ツアー、ピッチでのPK戦など)は2,000人近く、学校プログラムは約1,000人が参加しました。この数字はクラブが自ら集計して発表したものです。

飲食の面では、外部の専門会社と組みました。2026年8月の発表によると、セルタはオーク・ビュー・グループ(OVG)のホスピタリティ部門をパートナーに選び、スタジアムの飲食とホスピタリティ事業を作り変えることにしていて、これはOVGホスピタリティのスペイン初のプロジェクトです。

契約期間と投資規模は公表されておらず、クラブのトレーニング施設プロジェクト(セルタ360)へ協力範囲が広がる可能性もあるそうです。

博物館とツアーで平日の訪問者をつくり、飲食で滞在時間を延ばすやり方は、写真のクラブ博物館の外観が象徴するように、試合のない日もスタジアムに稼がせようとする設計に読めます。

クラブ博物館の看板がかかったバライードスの外観と、手前の道路に停まった車

写真: Rion Tools · 出典: Wikimedia Commons · ライセンス: CC BY-SA 4.0 · 2019年6月2日撮影、クラブ博物館の看板がかかったバライードスの外観

2030年ワールドカップの候補地、まだ開いている扉

ビーゴは2030年ワールドカップの開催地に名前を載せようと力を注いできましたが、順調ではありませんでした。2024年7月の現地の報道は、スペインがFIFAに出す11のスタジアムのリストからバライードスが外れたと伝えました。

その後、2026年3月26日の報道は、スペインサッカー連盟(RFEF)がFIFAにビーゴを含めるよう求める予定だと伝え、2026年1月のスタジアムDBは、市がメインスタンド(トリブーナ)を約5,500席から1万6,000席に広げ、グラダ・デ・ゴルと合わせて約4万3,000席の規模にする構想を出したと伝えました。

3つの機関(ビーゴ市、ガリシア自治政府、ポンテベドラ県議会)が費用を3分の1ずつ分担すべきだというのがカバジェロ市長の立場ですが、野党は、設計・日程・事業費が決まっていないと批判しました。

最新の動きは9月30日のEFE通信の報道です。RFEFのルサン会長が、バレンシアとビーゴがスペインの11スタジアムのリストの残りの枠を埋められると述べ、市長はこれを歓迎しました。

ルサン会長はFIFAの最低収容人数を4万1,000人と述べていて、3月の報道の4万3,000人とは差があります。第1段階の増築が終わると3万人強になり、さらに1万1,000人以上を増やす第2段階が必要だという説明です。

10月12日現在、FIFAの最終的な確定の知らせは見つかりませんでした。スタジアムDBは、市がこの増築はワールドカップだけでなくコンサートのような大型イベントにも役立つと説明していると伝えました。

ウィキペディアに載っているこのスタジアムの公演歴(1990年マドンナ、1998年ローリング・ストーンズ、2022年ミューズなど)を見ると、イベント収入という選択肢には説得力があります。ただ、2023年のガンズ・アンド・ローゼズの公演のあと、ピッチを約100万ユーロかけて張り替えたというフットボール・グラウンド・ガイドの報道もあり、イベント収入にはピッチの管理費がついてくる点もあわせて見る必要があります。

高尺スカイドームと比べてみると

ソウルの高尺スカイドームも、市の所有するスタジアムをクラブが使う構造です。ソウル新聞の報道(2024年11月28日)によると、高尺ドームの広告はキウム・ヒーローズが直接運営していて、随意契約(競争入札なしで結ぶ契約)で結ばれており、ソウル市の2025年予算案に計上された広告施設使用料は約30億ウォンです。

同じ記事で市議会議員は、高尺ドームの広告売上は蚕室の約4分の1の水準だと指摘し、蚕室は2025年の広告使用料が約93億ウォンで、競争入札で業者を決めていると説明しました。開場10年目の2024年にも、ソウル市の予算135億ウォンが高尺ドームに投じられたことも、あわせて取り上げられました。

2025年12月28日のtwig24の報道によると、ソウル市は上岩ワールドカップ競技場と高尺スカイドームからネーミングライツの販売を進める方針で、価値評価の調査(2026年予算1億ウォン)を経て、高尺ドームはまずキウムに提案し、まとまらなければほかの企業に売るという計画を示しました。

バライードスは、クラブが基本使用料(年約80万ユーロ、毎年2%上昇、一部の条件で変動)を払う代わりに、長期契約の中で商業的な名称と放送コンテンツを扱う権利を握る構造で、高尺ドームは広告使用料とネーミングライツを市が整理する段階にあります。

二つの構造のどちらが優れているとは言いにくいものの、クラブが数十年単位の計画を立てられるかという点で、出発点が違うことははっきりしているように見えます。

今回バライードスを整理して改めて感じたのは、名前が変わっても長く残るのは契約書の期間だということです。ABANCAの名前は10年単位で入れ替わるでしょうが、セルタは2076年以降までその場所を使えるようになりました。

ワールドカップであれ、ヨーロッパリーグであれ、その50年がどんな試合とどんな来場者で満たされるのかは、これからクラブが解いていく宿題です。

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