📱 カードニュースで見る
ラスベガス出張の予定にスフィア(Sphere)を入れたのは、純粋に興味があったからでした。野球場でもバスケットボールアリーナでもないのに、スポーツマーケティングのベンチマーク一覧からなぜこの建物が外れないのかを自分の目で確かめたかったのです。
行ってみて抱いた感想はひとつだけでした。これは単なる公演会場ではなく、建物自体がマーケティング資産になっているということです。

スフィア — 建物自体がマーケティング資産
スフィアは2023年9月に開業した1万8,600席規模の多目的公演場で、建設費だけで23億ドル、約3兆円近くかかっています。コンサートやスポーツ競技、カンファレンスなど多用途に使われますが、実際にこの建物が有名になったのは内部よりも外壁でした。160万個を超えるLEDで覆われた球体の表面全体がひとつの巨大なスクリーンになっています。私が行ったときはステンドグラス風のパターンが表示されていましたが、数時間後に見直すとまったく別のイメージに変わっていました。
建物が固定された外観を持つという常識自体を覆される感覚でした。
メディアプラットフォームとしてのスフィア
これがマーケターの目に特別に映った理由は、スフィアが自らを競技場ではなくメディアプラットフォームと定義しているからです。外壁と内部スクリーンをキャンバスのように開放し、ブランド、スポーツ、アーティスト、ゲームコンテンツと協業しながら絶えず新しいイメージを掲出します。建物そのものがイベント時だけ点灯するハードウェアではなく、毎日コンテンツを更新するメディアチャネルとして運用されているのです。

16Kラップアラウンドスクリーンと4D演出
内部に入ると、その規模に再び圧倒されます。16K解像度のラップアラウンドLEDスクリーンが視界全体を包み、ビームフォーミング技術を適用したサウンドシステムに加え、温度・風・香りまで組み合わせた4D演出が同時に展開されます。
ここでは観客がコンテンツを「見る」のではなく、コンテンツの中に入っている状態になります。鑑賞が受動的な観賞ではなく、体験そのものの主人公になるよう設計されているという印象を受けました。

出口まで続くブランド体験
面白かったのは、この没入感が会場内で終わらない点でした。出口へ向かう動線の案内サインでさえLEDの造形物で処理されており、観覧が終わって階段を下りる瞬間までブランド体験が途切れないよう設計されているのを見て、空間マーケティングとは結局、始まりから終わりまでの動線全体をすべてコンテンツと見なすということなのだと改めて感じました。
まとめ — 外壁をメディア資産に
帰国便の機内でずっと考えていたのは、私たちはまだスタジアムの外壁をここまで積極的に使ったことがないということでした。国内のスタジアムは外壁がほとんど静的な仕上げ材で終わり、メディア要素は電光掲示板の内部にとどまっています。
新築のドーム球場であれ、今後リモデリングする既存の球場であれ、外壁自体をブランドとファン体験を運ぶメディア資産として設計することを真剣に提案すべきだと固く決意しました。スフィアほどの規模でなくとも、建物がそのままマーケティングであるという発想だけは国内の球場にも十分移植できると思います。

Leave a Reply