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パナソニックスタジアム吹田の外観

パナソニックスタジアム吹田後記 — 140億円の募金、ガンバは「大阪ジョーズ」になりかけた説

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サイト運営者が直接執筆するプロスポーツマーケティングインサイト2026-10-05 · 閲覧 201
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目次 · 読了時間 約13分
  1. 「大阪ジョーズ」になりかけたクラブ、3分の1しか埋まらないスタンドから始まった140億円の募金
  2. チーム紹介 — 松下の社内サッカー部からJ1優勝2回まで
  3. 寄付で建てたスタジアムの構造 — 所有は市、運営はガンバ
  4. 観客とチケット — 平均3万人を初めて超えた2025シーズン
  5. 空間活用とF&B、グッズ(MD) — 近いスタンドが売上になる仕組み
  6. 広告インベントリとネーミングライツ — 年2億円、契約は2027年末まで
  7. KBO・Kリーグと比べてみると — 税金515億ウォン vs 寄付140億円
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韓国のクラブで新スタジアムの話が出ると、会話はたいてい「予算を誰が出すのか」から始まって、その話で終わります。ところが大阪北部の吹田市には、個人3万4,000人余りと企業700社ほどが出したお金で建てられたサッカー専用スタジアムがあります。

ガンバ大阪のホーム、パナソニックスタジアム吹田(愛称「パナスタ」)です。現役マーケターの目で、このスタジアムの事業構造を確認してみることにしました。

まずお断りしておくことがあります。私はこのスタジアムに実際に行ったことがありません。

クラブと吹田市の公式資料、日本のメディア記事、現地観戦者のレビューを重ねて読んでまとめた記事なので、数値ごとに出典と時点を併記しました。メディアによって数字が分かれる項目は、クラブと公的機関の発表を基準にしました。

2023年5月3日、大阪ダービー(ガンバ対セレッソ)が行われたパナソニックスタジアム吹田

写真出典: Agenasu、Wikimedia Commons(CC0、パブリックドメイン提供) · 2023年5月3日の大阪ダービー(ガンバ対セレッソ)

「大阪ジョーズ」になりかけたクラブ、3分の1しか埋まらないスタンドから始まった140億円の募金

ガンバ(GAMBA)はイタリア語で「脚」を意味し、日本語の「頑張る」の語感とも重なる名前だと、クラブ公式の紹介に書かれています。

ところが1992年にクラブ名を決めていた頃には、まったく別の名前が有力だったという逸話が伝わっています。日本語版ウィキペディアには、親会社の松下(現パナソニック)がユニバーサル映画を買収した時期と重なり、スピルバーグの映画『ジョーズ』と大阪城を掛け合わせた「大阪ジョーズ」が有力候補だったものの、商標の問題で流れたと書かれています。

クラブが直接確認した内容ではなく、百科事典の記載レベルの逸話なので、軽く受け止めておくことをおすすめします。ただ、日本企業がプロサッカーをどんな感覚で見ていたのかを想像させる話です。

スタジアムの出発点はずっと現実的でした。クラブ公式の10周年特設サイトの「パナスタ物語」によれば、新スタジアム構想は2000年頃に中長期計画として初めて出て、2006年にはアジアサッカー連盟(AFC)が、築約40年の万博記念競技場をAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のホームスタジアムとしては使えないと通告しました。

決定打は2008年でした。その年の5月に社長に就任した金森喜久男は、就任直前の3月にこの競技場でのACL開幕戦を見に行き、約2万1,000人収容のスタンドに観客が3分の1ほどしか入っていない様子に衝撃を受けたそうです。

ゴール裏からピッチまで65m、メインスタンドからでも45mで(陸上トラックが囲む構造でした)、トイレや屋根も不足していたといいます。

解決策を出したのは経理部長の小川正美だったと、公式サイトは伝えています。募金団体が寄付を集めてスタジアムを建て、完成した公共スタジアムを自治体に寄付し、運営はガンバが担う仕組みです。

企業が出した寄付金は法人税の計算で費用(損金)として認められるという点が、説得のポイントでした。構想は2009年7月に発表され、2010年3月に募金団体が設立されましたが、参加団体は吹田市のスタジアムサイトによれば、関西経済連合会、日本サッカー協会、Jリーグ、ガンバでした。

金森社長は、このスタジアムが野球の甲子園のように人々の心をひとつにする存在になってほしいと願っていたそうです。

2018年8月25日に撮影した、募金で建てられたスタジアムの正面外観

写真出典: Tokumeigakarinoaoshima、Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0) · 2018年8月25日撮影、募金で建てられたスタジアムの正面外観

個人的に最も心に響いたのはこの順序でした。クラブが最初に動いたきっかけは建築スペックではなく、がらがらのスタンドを前にした経営者の居心地の悪さで、その居心地の悪さを、税金の要請ではなく「寄付の設計」で解いたという点です。

スタジアムの新築を語るとき、私たちは図面から取り出しますが、このスタジアムは空席の前から始まりました。

チーム紹介 — 松下の社内サッカー部からJ1優勝2回まで

ガンバ大阪のルーツは1980年に創部された松下電器産業サッカー部です。1984年に日本サッカーリーグ(JSL)2部、1986年に1部へ上がり、1992年に「パナソニック ガンバ大阪」という名前が付いて、翌年に発足したJリーグの創設メンバー10クラブ、いわゆる「オリジナル10」に入りました。

J1優勝は2005年と2014年、アジア・チャンピオンズリーグ優勝は2008年で、2014年にはJ1・リーグカップ・天皇杯をすべて制する国内三冠を達成しました。天皇杯優勝は1990・2008・2009・2014・2015年の5回です。

以上の実績は、日本語版ウィキペディアを基準にまとめました。

株主構成も目を引きます。クラブ公式のクラブ概要が明らかにしている出資構成は次のとおりです。

運営会社の株式会社ガンバ大阪の筆頭株主はパナソニックスポーツ(70%)で、関西電力・大阪ガス・西日本旅客鉄道(JR西日本)が10%ずつを分け合っています。ホームタウンは吹田・豊中・茨木・高槻・池田・摂津・箕面の7市です。

電気とガス、鉄道という関西の生活インフラ企業3社が株主であることは、地域密着マーケティングの土台がどれほど固いかを示す部分です。

最近の戦績は正直なところ物足りません。2025シーズンのJ1は9位(17勝6分15敗、勝ち点57)で、2026年にはJリーグが秋春制へ移行する過渡期の特別大会「百年構想リーグ」(降格なし)が開かれ、ドイツ出身のイェンス・ヴィッシング監督体制が始まりました。

2月10日の大阪ダービー開幕戦でPK戦の末にセレッソを破ったのが最初の公式戦だったと、フットボリスタは伝えています。新しい2026-27シーズンは9月21日時点で8試合1勝3分4敗(勝ち点6)の16位で、9月23日の天皇杯3回戦では徳島ヴォルティスを5-0で破っています(フットボールチャンネル)。

参考までに、2026年の選手名簿に韓国籍の選手はいないことが確認されます。

現地の観戦レビューをまとめると、スタジアムへの行き方は大阪モノレールの万博記念公園駅から徒歩15分前後が基準です。観戦ガイドは、試合終了直後は駅がひどく混雑して入場規制がかかるので、早めに出るか、近くの大型ショッピングモール、エキスポシティで時間をつぶすよう助言しています。

施設自体は、現地のある観戦ブロガーが初めて行って「ここ日本か?と思った」と書くほどの好評です。上階の座席からでもピッチが近く、柱ごとにあるモニターのおかげでどこからでも試合の流れを見逃さないというレビューです。

2017年9月9日、J1第25節ガンバ大阪対ヴィッセル神戸

写真出典: TAKA@P.P.R.S、Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0) · 2017年9月9日のJ1第25節(ガンバ対神戸)で撮影

寄付で建てたスタジアムの構造 — 所有は市、運営はガンバ

総事業費は140億8,567万円でした。クラブ職員がまとめた公共施設運営資料(文部科学省掲載)と日本語版ウィキペディアが同じ内訳を載せています。

法人寄付が721社から99億5,019万円、個人寄付が3万4,627人から6億2,215万円で、残りの35億1,333万円はスポーツ振興くじ助成金などの公的支援です。全体の約71%を企業、約4%を個人、約25%を公的支援が担った計算になります。

私がこの数値で計算してみたところ、企業1社あたりの平均は約1,380万円、個人1人あたりの平均は約1万8,000円です。大口の数社ではなく「小さなお金がとても多く集まった」構造だということが、数字で確認できます。

完成したスタジアムは吹田市に寄付されて公共施設になりました。所有者は吹田市、施設を委託されて運営する事業者(指定管理者)はガンバ大阪です。

公共施設でありながら、クラブが運営収益を直接作れる構造がこのモデルの核心です。スタジアムは2015年10月に竣工し、2016年2月のこけら落とし試合には3万5,271人が入ったそうです(日本語版ウィキペディア基準)。

クラブは、ホームタウンの市民を「支援者」であり「顧客」でもある存在に一度にしたわけです。竣工式には寄付者4,394人が参加したと吹田市のスタジアムサイトが書いていますが、自分の名前がかかったスタジアムにあらためてチケットを買って入る人たちの愛着は、一般の観客とは質が違うだろうと思います。

観客とチケット — 平均3万人を初めて超えた2025シーズン

クラブ発表ベースで、2025シーズンJ1ホーム19試合の入場者数は57万135人でクラブ史上最多となり、平均は3万7人とクラブ史上初めて3万人を超えました。約4万人規模のスタジアムに対して4分の3ほどの稼働率です。

参考までに、一部の記事では平均3万7,000人と表記されている場合もありますが、クラブが発表した総入場者数57万135人を19試合で割ると3万7人で合っているので、この記事ではクラブの数値に従いました。

入場収入も一緒に動きました。2024年度の入場収入は11億8,500万円(東洋経済)で、2025年の年次レポートでは前年比約23%増と伝えられています。

新スタジアムの効果は、開場初年度にすでに数字になって表れました。上記の文部科学省掲載資料を見ると、旧万博記念競技場の最終年だった2015年のリーグ平均観客数は約1万6,000人、入場収入は7億9,000万円でしたが、新スタジアム初年度の2016年には平均2万5,342人(約1.6倍)、入場収入13億9,000万円(約1.7倍)へと伸びました。

先に紹介した「3分の1しか埋まらないスタンド」の話が、数字で覆ったわけです。

空間活用とF&B、グッズ(MD) — 近いスタンドが売上になる仕組み

スタジアムの最大の商品は距離です。最前列からタッチラインまで約7m、ゴールラインまで10mで、最前列とピッチの高低差は150cmだと、Numberがスタジアム開場直後に伝えました。

7mは、日本で国際Aマッチを開催できるスタジアムの中で最も短い距離だと言われています。すべての座席に屋根があり、スタンドの中段にはスタジアムを一周するコンコース(観客の移動通路)と無料Wi-Fiがあります。

GIGAZINEは、最前列の「エキサイティングシート」では選手ベンチとほぼ同じ目線になると紹介しました。

スタンドを覆う屋根構造が見えるスタジアム外観(2018年8月25日)

写真出典: Tokumeigakarinoaoshima、Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0) · 2018年8月25日に撮影したスタジアム外観、スタンドを覆う屋根構造

この近さが食べていける売上につながった状況が、クラブの資料にあります。同じ運営資料の2015年→2016年の比較では、グッズ売上が4億9,000万円から5億8,000万円(約1.2倍)に増えたのに対し、飲食売上は1億3,000万円から3億6,000万円へと約2.8倍に跳ね上がりました。

入場者が増えた以上に「滞在時間」が増えたというサインとして読めます。

最近の数値は、クラブが2026年2月に発行した年次レポートの紹介記事にあり、2025年のグッズ売上は9億3,000万円(前年比28%増)、飲食売上は4億1,000万円(24%増)、VIP関連売上は2億5,000万円(7%増)です(サカノワ)。

入場者の増加率(15%)よりグッズと飲食の増加率のほうが大きい以上、来場者ひとりが使うお金そのものが増えたということです。

現役マーケターとして、この観戦ブロガーの「ここ日本か?」という感想がうれしいです。海外のスタジアムに似ているという表現は、結局「試合ではなく体験を売っている」という意味に聞こえるからです。

スタンドが近く、屋根があり、画面がどこからでも見えれば、観客は席を離れにくくなり、席を離れにくくなれば、飲食とグッズの購入はむしろ試合前後の動線に集中します。ただ、この売上増加分がスタジアムの効果によるものなのか、成績の効果なのかは、資料だけでは切り分けて語りにくいです。

広告インベントリとネーミングライツ — 年2億円、契約は2027年末まで

ネーミングライツ(施設に企業名を付けられる権利)は、クラブではなくスタジアムの所有者である吹田市が売っています。吹田市の公式ページが公開した内容によれば、パナソニックスポーツとの契約は2018年1月に始まり、2022年12月28日に発表された更新契約は2023年1月1日から2027年12月31日までの5年間で総額10億円(年2億円、消費税別)です。

クラブの株主であり、名前を掲げた企業がスタジアム名まで持つ構造ですが、契約満了が2027年末なので、次の更新交渉がどうなるか見守る価値があります。

クラブ全体の売上は同じ流れの上にあります。東洋経済が2025年6月に伝えたところでは、2024年度の売上は72億円を超えて過去最高で、クラブは売上100億円突破を次の目標として掲げてきました。

Jリーグが開示した2025年度の売上は88億1,700万円でJ1の3位でした(1位の浦和は113億1,000万円、2位の川崎は100億6,900万円)。年2億円の契約金が市とクラブの間でどう配分されるかは、私が確認した公開資料では見つかりませんでした。

ただ、名前を掲げた親会社が引き続き同じ立場に立ち続けるのかは、2027年以降のクラブ事業の安定性に直結する問題です。

KBO・Kリーグと比べてみると — 税金515億ウォン vs 寄付140億円

韓国でクラブと自治体の関係を最も近い形で比べられるのは、テグFCの専用スタジアムです。2019年3月9日にオープンしたこのスタジアムは、旧テグ市民運動場のサッカー場を2016年12月からリフォームしたもので、韓国日報が伝えたところでは、総額515億ウォンをテグ市が全額負担し、1万2,000席規模で、テグFCはテグ市から無償使用権を得て使っています。

市が建ててクラブが使う韓国式のモデルと、個人と企業が建てて市が所有しクラブが運営する吹田モデルは、同じ「公共スタジアム」でもこれほど違います。

140億円は為替によって変わりますが、おおよそ1,000億ウォンを上回る規模で、テグのスタジアムの事業費の2倍前後です。

ネーミングライツも質が違います。テグのスタジアムは2019年にDGBテグ銀行と結んだ契約が韓国プロサッカー初の事例として知られ、2025シーズンから「テグiMバンクPARK」に変わりました。

このスタジアムは2025年4月の報道によれば、その年のホーム5試合のうち4試合が完売したそうです。観客の熱気は似ていても、建設の財源が違えば「このスタジアムは誰のものか」というファンの感覚も変わりうると思います。

個人の寄付で建てられたスタジアムでファンの愛着が数字で確認されつつあるガンバの事例が、私たちのクラブが自治体と築いていく次の協力モデルにどんなヒントを与えられるのか、気になります。

まとめると、パナスタは建物よりも「空席をどう埋めるか」という問いから出発し、3万4,000人余りの個人寄付と700社ほどの企業の参加が作った平均3万人のスタンドで、答えを示しているスタジアムです。成績が揺らぐときにもこの構造がどれだけ持ちこたえるかは、2026-27シーズンが試金石になりそうです。

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