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赤い応援の波で埋め尽くされた埼玉スタジアム2002の観客席

埼玉スタジアム2002 — 平均3万7350人、赤字を受け入れた理由

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サイト運営者が直接執筆するプロスポーツマーケティングインサイト2026-08-12 · 閲覧 192
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POLUSのロゴが入った2026/27シーズンユニフォームを着た浦和レッドダイヤモンズの選手たち

出典:urawa-reds.co.jp(浦和レッドダイヤモンズ公式ホームページ)2026/27シーズンユニフォームプロモーションバナーのキャプチャ・球団公式PR画像、編集・参考目的で使用

Jリーグの統計を調べていて、目に留まった数字が一つありました。

さいたまをホームタウンとする浦和レッドダイヤモンズの2025シーズンJ1リーグ平均観客数は3万7350人という記録で、同シーズン基準のJ1リーグ全体平均が2万355人(2024年度集計基準)だったことを考えると、ほぼ2倍近い数字でした。

一シーズンだけの一時的な数字でもありませんでした。

浦和は2024シーズンにすでに平均3万7519人を記録し、15年ぶりに年間70万人動員を超え、2025シーズンも70万9655人で2年連続70万人の節目を守りました。

マーケターの立場からすると、派手な一発よりもこうした継続性の方がはるかに注目すべき指標です。

観客とファンダム

浦和の本拠地はさいたま市緑区にある埼玉スタジアム2002です。

6万3700席規模で日本国内最大、アジアでも有数のサッカー専用スタジアムですが、2002年の日韓ワールドカップ準決勝を開催するために建設され、以来ずっと浦和のホームとして使われています。

ただしこのスタジアムはさいたま県が所有し、指定管理者(地方自治体が公共施設の運営を民間に委託する際に指定する運営主体)が管理する公共施設であるため、他のJリーグのスタジアムとは異なり命名権(企業が費用を払って施設に名前を付ける権利)を売却していません。

最近取り上げた鹿島アントラーズのメルカリスタジアムのように企業名が付いたスタジアムとは対照的な点です。

夜の埼玉スタジアム2002、観客のいないスタンドとピッチの全景

出典:stadium2002.com(埼玉スタジアム2002公式ホームページ)スタジアム紹介ページのキャプチャ・施設公式PR画像、編集・参考目的で使用

観客数以上に印象的なのは、その観客席を埋めるサポーター文化です。

浦和サポーターは日本サッカー界で最も組織的で熱狂的な応援文化として知られており、ビッグマッチが開催されるとスタンドが真っ赤なユニフォームで埋め尽くされ、よく「レッドの海」と呼ばれるほどです。

実際にこのスタジアムを訪れた海外観客のレビューを見ると、キックオフから試合終了まで歓声が絶えず、感覚が圧倒されるほどで、耳栓を持参する人もいるという話が出るほどでした。

サッカー専用スタジアムのためグラウンドと観客席の距離が近いことも一因で、現地の観戦レビューブロガーの間では選手の表情やボールを蹴る音まで感じられるという感想がよく挙がります。

良い席を確保するにはキックオフの2~3時間前には到着すべきだというアドバイスも、複数のレビューで共通して見られました。

この部分で、浦和サポーターが「チームが勝っているから応援するのではなく、クラブが存在するから応援する」という姿勢を守ってきたという評価を思い出しました。

マーケティングの観点から見ると、これほどのブランドロイヤルティはお金で簡単に買える資産ではありません。

埼玉スタジアム2002の観客席を埋め尽くす観客たち

出典:ウィキメディア・コモンズ、撮影 江戸村のとくぞう(Edomura no Tokuzo)、CC BY-SA 4.0ライセンス・埼玉スタジアム2002観客席の写真、参考:埼玉スタジアム2002 ウィキペディア

ただしこの集客力も、成績が悪ければ揺らぎうることを示す現地観戦記もありました。

サッカー専門記者の宇都宮徹壱氏が2026年4月に浦和と東京ヴェルディの試合を取材した際、天気の良い週末の試合であったにもかかわらず、電車が異例に閑散としていて、バックスタンド上段の席が目立って空いていたと書いています。

当時浦和はすでに4連敗を喫していましたが、この日の試合もPK戦の末に落として5連敗となりました。

どれほどリーグ最高の集客力を持つ球団でも、チーム成績がそのまま観客動員に反映されることを示す事例でした。

売上と財務

数字で確認できるこのファンダムは、そのまま売上につながっています。

浦和は2023年度(2023年2月~2024年1月会計年度)に事業収益103億8400万円を記録し、Jリーグ史上初めて100億円を突破、2024年度も102億1100万円で2年連続100億円台を維持し、再びリーグ最高記録を打ち立てました。

そして2025年度には113億1000万円(レートによって変動しますが、ウォンでおおよそ1050億~1060億ウォン程度)まで伸び、3年連続100億円突破を続けました。

収益構成は入場料・広告料・グッズという3つの軸に分かれますが、2025年度基準で入場料収益22億1400万円、広告料収益(パートナー協賛金とRBC、すなわちレッズビジネスクラブという企業会員制プログラムの会費などを合わせたもの)41億9500万円、グッズ収益16億8200万円でした。

グッズ収益は3年連続で過去最高を更新しました。

ただし2025年度は純損失1億円を記録し、コロナ期であった2020年以降初めて赤字に転じました。

原因は2025年夏に米国で開催されたFIFAクラブワールドカップへの参加でした。

浦和は2022年のACLチャンピオンズリーグ優勝を足がかりに、日本クラブ初となる32チーム制に拡大されたこの大会に出場しましたが、インテル・ミラノやリバー・プレートなどと同組に入り、グループステージで敗退しました。

遠征費用と戦力補強への投資が大きく、事業経費が前年比15億2400万円増加し、その結果が純損失として表れたのです。

それでも球団側はこの参加を長期的な競争力強化のための投資と位置づけており、実際にさいたまのサポーター約5000人がアメリカ遠征にまで同行したことから、ブランド露出効果はかなりあったと見られます。

グッズと店舗展開

グッズ面で最も注目される動きはマスコット専門店です。

浦和は2025年11月、イオンモール浦和美園に「REDIA FACTORY(レディアファクトリー)」という店舗をオープンしましたが、Jリーグ初の常設マスコットキャラクター専門店だといいます。

マスコット「レディア」ファミリーをテーマにしたぬいぐるみ・Tシャツ・ステッカーなどを販売する店舗で、取扱商品の約80%がこの店舗限定の商品だそうです。

ユニフォーム販売がグッズ売上を牽引する構造の中で、マスコットグッズで販売チャネルを広げる戦略といえます。

サッカークラブがスタジアム内の店舗を超えてショッピングモールに常設店を出すという発想は、Kリーグの球団にも参考になる点だと思います。

マスコット専門店「REDIA FACTORY(レディアファクトリー)」オープン案内バナー

出典:redia-factory.jp(球団マスコット店公式ホームページ)オープン案内バナーのキャプチャ・球団公式PR画像、編集・参考目的で使用

広告インベントリと海外パートナーシップ

広告インベントリ(スポンサー露出の場と権利を総称するマーケティング用語)の構造を見ると、POLUS(住宅建設)、ナイキ、三菱重工業、三菱自動車、DHLなど9社が最上位ランクのトップパートナーとして参加しており、その下にオフィシャル・プレミアム・ファミリーというランクで数十社がパートナーシップを結んでいます。

注目されるのはベトナム航空とのパートナーシップで、球団はこれを単純な広告契約ではなく、ASEAN(東南アジア諸国連合)地域と日本を結ぶ「ハブ」の役割として説明しています。

実際に浦和はベトナム・ハノイでのアカデミーサッカースクールを2024年9月から運営し、2年目を迎えており、タイのムアントン・ユナイテッドともパートナーシップを結んで交流しています。

ベトナム航空とのパートナーシップは、このアカデミー開設後の2026年2月に別途締結されたプレミアムパートナー契約です。

スポンサーシップを国内向けの広告としてだけ使うのではなく、海外市場開拓の足がかりとして活用する戦略であり、海外進出やグローバルマーケティングを検討する国内球団にとっても参考になる部分です。

チケット

チケットは座席ランクが非常に細分化されています。

メインスタンド中央のプレミアム席が最大9200円、ゴール裏のサポーター席(自由席)は会員価格2100円から当日窓口価格3200円までと、最も手頃な部類に入ります。

4階のプライベートルームである「ビューボックス」は20人基準で最大60万5000円のコースもあり、一般観客席から企業接待用のプライベート空間まで幅広く備えた構造です。

2026・27シーズンからは試合ごとの需要に応じて価格が3段階に変わる「フレックスプライシング」(需要連動型価格制)も導入するとのことで、チケット販売戦略も一段と精緻になっています。

放映権

放映権は個別の球団ではなく、Jリーグ全体が一括で契約する構造です。

Jリーグは2023年にDAZNと11年間で最大2395億円(レブニューシェア、つまり売上連動の配分方式を含む金額)規模の放映権契約を締結し、2033年まで続きます。

浦和を含む各球団はこの放映権料をリーグ分配金として受け取っており、2025年度に浦和が受け取ったJリーグ分配金は5億3900万円でした。

地域密着と社会貢献

地域密着活動では「ハートフルクラブ」というサッカー人格教育プログラムが目を引きます。

2025年だけでさいたま市・埼玉県の小学校や幼稚園などを544回訪問し、3万9718人と一緒にボールを蹴ったといいます。

また球団が運営する複合スポーツ施設「レッズランド」は2025年7月に開設20周年を迎え、その20周年を記念して同年12月27日に別途開催されたイベントで、1198人が一緒に作った人型のサッカーボール造形がギネス世界記録として認定されました。

20年間地域の子どもたちと直接触れ合いながら積み重ねてきた活動がこうした象徴的なイベントにつながったことを見ると、一度きりの社会貢献ではなく、継続性そのものがブランドになった事例だと感じます。

浦和レッズサポーターが作った人型サッカーボール造形、ギネス世界記録達成現場の空撮

出典:redsland.jp(レッズランド公式ホームページ写真ダウンロードページ)2025年12月27日ギネス世界記録達成現場の撮影(写真協力:株式会社ドローンブレス)・球団公式配布画像、編集・参考目的で使用

Kリーグと比較すると

さまざまな点で示唆に富んでいます。

2025シーズンのKリーグ1で最も観客を集めた球団はFCソウルで平均2万4417人でしたが、浦和の3万7350人には及ばない水準です。

Kリーグ1・2を合わせた2025シーズンの有料観客数は3年連続で300万人を超え、入場収入も461億ウォンで史上最高を記録し、集客自体は明らかに上向いていますが、収益構造を見ると依然として多くの球団が親会社の支援に大きく依存しています。

一方浦和は入場料・広告料・グッズという3つの独立した収益源を自力で育ててきており、その結果がJリーグ史上初の3年連続100億円台の売上として表れているわけです。

マスコット専門店で商品販売チャネルを広げ、海外航空会社とのパートナーシップを通じてASEAN市場まで狙う姿を見ると、ファンダムの規模だけでなく、そのファンダムをビジネスにつなげる精巧さが目立ちます。

Kリーグの球団にとっても、親会社への依存度を下げ、自前の収益源を多角化する方向で参考になる点は少なくないと思います。

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